極真新時代の影で
〜第24回全日本ウエイト制空手道選手権大会に感じたこと〜
まずは大会を導かれた松井館長、中村師範、大会のご成功おめでとうございます。そして選手、指導者の皆様、大会に様々な形で携わられた皆様、本当にお疲れ様でした。
今ウエイト制大会の最大の特徴は、これまで散見していた少年部出身者の活躍がひとかたまりになって、遂に大きな潮流を形成したことでしょう。他のスポーツ競技では幼少期からキャリアを持つアスリートの活躍が目立ちます。四十年近い競技化の歴史を経て、極真空手界にもそんな時代が到来したといえそうです。
十代後半〜二十歳前後の彼らは身体的にも未だ発育途上にあり軽量〜中量級に特に多く見られます。つまり藤田(愛媛)、木村(奈良)、澤村(総本部)(以上軽量級)、鈴木(城北)、渡辺(城北)、森(城西)(以上中量級)、小暮(四谷/重量級)、そして中村道場では長野(中量級)、渡邊(重量級)といった選手達です。それは感性の空手とでもいうべきか―――彼らは皆、「早い展開(動体視力+予測+条件反射+リズム感)」「当て勘」「間合いの操作」「優れたバランス感覚」「理にかなったキネティックチェーン(全身の運動連鎖)」などを、そして「個性」を存分に見せ付けてくれました。それらは簡単に言ってしまえば脳〜神経のなせる業です。成人の道場生が身に付けるのに最も苦労するのがこういった要素でもあります。
近年「スポーツ脳」「右脳」などというキーワードをよく目にするようになりました。その詳細はここでは省きますが、指導の現場にあって私自身非常に興味を抱いているテーマで、知るほどに我々と彼ら若いアスリートの「脳の使い方」には大きな隔たりを感ぜずに入られません。
スキャモンの発育曲線(http://www.volleyball.gr.jp/jtr.htm)でよく知られるように、小学生時に神経系の発育はほぼ完成されます。つまりこの時期に上手く神経系統を鍛えてやることが「天才型」の選手育成に繋がります。トレーニング内容が運動自体のメカニズムに大きな影響を及ぼすのです。
ここ数年の取り組みにもかかわらず、中高時代を通じて学業やクラブ活動との両立が難しくもあり、私自身もはっきりと指導成果を出すまでには至っておりません。成果を上げられている支部、道場を目の当たりにするにつけ、今後指導者として大きな課題を突きつけられた思いです。
かつて極真空手は若者の文化でした。逆に言えば当時の大人にとって極真空手は新興文化に過ぎず、それ故、積極的に我が子に極真空手を学ばせようという人は稀でした。「極真世代」が子を持ち、極真空手界で少年部が急増してきたのはここ十数年のことです。前述の若い世代の空手歴とピタリ符合します。彼らの空手は、あるいは従来の極真空手像をも変えていくのかも知れません。
そんな中、ベテラン中のベテラン、中村道場OBでもある田ヶ原支部長(中量級/大阪なみはや支部)が準々決勝で破れ、惜しくも三度目の世界大会の出場権を逃しました。相手は奇しくも前述の渡辺選手(城北)でした。
私自身はコーチ、セコンドとして三人の選手にかかわらせていただきましたが、田ヶ原支部長もそのうちの一人でした。氏の実績は改めて記すまでもありませんが、私自身尊敬する空手家であり、また友人としてお付き合いさせていただき、いつもその謙虚な人柄に感銘を受けてきました。
試合を終え、最後かもしれない四十一歳の挑戦に感極まるものがありました。(支部長としてはますますご多忙を極められるであろうが…)今はただゆっくり休んでいただきたい、それが唯一の願いです。
名人、達人と謳われた田ヶ原支部長の戦いに関わらせていただいたこの十年にただ感謝するばかりです。奇跡のようなその空手に実に多くのことを学ばせていただきました。そしてかけがえのない感動を本当にありがとうございました。押忍