2010年度イベント情報
■第
42回全日本空手道選手権大会|11月21・22日|東京体育館
第42回全日本空手道選手権大会観戦記
兵庫支部 分支部長 永井 伸明
11/20-21東京体育館にて、第42回全日本空手道選手権大会が開催されました。そこで、私なりに中村道場、関西勢の選手を中心に感じたことを書き記していきたいと思います。あくまで、私個人が感じた事ですのでご理解を頂きたい。
初日
恒例の河岡師範の開会太鼓が場内に響き渡る。男達の闘いが始まる合図だ。
Aブロックゼッケン1番赤石誠が舞台に上がる。静かなスタートであるが、実力差からあっけなく合わせ一本勝ち。観客も、もの静かに見守る。この後次第に盛り上がってくるのだが、全日本大会にしては、正直静か過ぎるスタートだ。
第2試合、全関西大会チャンピオン秋月祐哉(20歳)が関西勢トップバッターで登場。初戦は実績のあるベテラン山下武範を危なげなく退ける。続く2回戦、延長で優勝候補赤石誠と対戦。おおかたの予想を覆す大金星。体重を少し上げて長いリーチからの強い突きと、ムチのようにしなる下段、豊富なスタミナを駆使し延長で完勝する。地方での実績は抜群であるが、全国区での活躍は今回が初めてと記憶する。これで自信を持った彼は、波に乗っていくだろう。明日に期待。
秋月の活躍に中村昌永も続く。初戦は『体がフリーズした』ためか動きが硬かったが、体重判定の末樋口陽太を退ける。続く2回戦、ロシアの強豪、ヌルマガメド・マメドフの変幻自在の技を紙一重でかわし、持ち前の反射神経と負けん気の強さで粘り、体重判定勝利。先月の全アジア大会優勝の勢いが続く。体が動き始める。
Dブロック、関西勢最後の選手松岡朋彦登場。初戦は小川泰治に危なげなく勝利し、二回戦は同じ関西勢の和田英人を得意の距離を保ちながら勝利する。予想どおり優勝候補筆頭の田中健太郎選手との対戦となる。
関西からは、秋月、中村、松岡の3名が二日目に残った。
彼等の躍進の陰で、惜しくも初日で姿を消した関西の選手の健闘が光った。
外屋敷信宏は初戦、今売り出し中の鎌田翔平の切れのある蹴りと膝のラッシュに自分の組手が出来ず敗退。かつての対戦では勝利したものの、鎌田の成長振りに舌を巻いた。
更に、ウエイト制軽重量級で4位の実績のある倉田尚彦も初戦は危なげなく勝利するも、二回戦オーストラリアの強豪スティ−ブン・キュージックの前に善戦するも敗退。ここで姿を消す。通称『尼金』メンバーがここで消えた。
岡田充弘は、初戦に土屋大と壮絶な打ち合いの末、完勝し二回戦は重戦車近藤博和とも真っ向勝負で挑むが力負けした。しかし、勇敢に立ち向かう姿は観客に感動を与えた。
西原泰三は初戦で、ハードパンチャー金久保典幸に惜敗。顔面殴打で一時試合を中断するも気持ちが折れず、真っ向勝負に出た事を評価したい。彼も若いので今後に期待出来る。
大阪西支部の期待の若手、木下成準は小柄な原田祐光を相手に攻めきれずに体重判定負け。木下VSダミヤフとの対戦を楽しみにしていたので、残念だ。
勝利した20歳の原田選手は二回戦では、ウエイト制準優勝の実績を持つ正道会館板谷泰志にも勝利した好選手である。体重差30`を感じさせない若手ファイターに拍手を送りたい。
北大阪支部早川晃司、大阪東支部田中正信も健闘するも共に二回戦で敗退。彼等も地方大会では、活躍するも全国ではまだ良い結果を残せていない。全国の壁は厚い。
今大会、関西勢は、出場者が非常に少なかったために、二日目に残った選手が少なく寂しい思いがした。関西地区強化稽古では多数の選手が参加しているのだから、もう少し積極的に大会に挑戦して欲しいと感じるのが正直なとこだ。このままでは、関東勢に入賞をどんどん持っていかれる。苦言を呈すが関西地区の大きな課題の一つである。
関西地区独自で、『強化指定選手』を数名選出し支部長を中心にバックアップする制度を作るなどの工夫が必要なのではないか。
二日目
前日に赤石誠に勝利し、波に乗る秋月祐哉が稲岡祐樹と対戦。粘る稲岡を得意の下段と突きで完封。世界代表の期待がかかる。
秋月の頑張りに中村昌永も燃える。相手は、17歳でありながら今年ウエイト制中量級を制した高橋佑太だ。テクニックのある高橋に中村が圧力をかける。間合いを詰めて拳を叩き込み、下段で足を効かすと、徐々に高橋の軽快な動きが止まり、苦痛に顔がゆがむ。延長の末、高橋を退ける。秋月と同じく世界代表まであと一勝。
関西勢Dブロック3回戦最終戦。兵庫の隼、松岡朋彦が優勝候補最右翼田中健太郎に挑む。『田中選手に勝つのは難しいので、蹴って蹴って蹴るまくる』と試合前に田中対策をイメージしていた松岡。言葉通り、初めから蹴りを繰り出すが、田中の重い下段と突きの連打に苦戦を強いられ本戦判定負け。大物食いを期待したが、ベスト32で力尽きた。しかし、世界ウエイト制準優勝の実績を持つ松岡はこのままでは終わらないだろう。大会翌日から、痛めた足を引きづりながらも来年のウエイト制に向けて稽古を開始したと聞く。
いよいよ、ベスト8、世界代表をかけた闘いが始まる。
Aブロック秋月祐哉が鎌田翔平と対戦。秋月、善戦するも、鎌田の鋭い蹴りと高い膝にペースが摑めず敗退。鎌田の高い壁は破れなかった。鎌田はウエイト制の時よりも、突き蹴りの威力が増したように感じた。打たれ強さに定評のある外屋敷や秋月ですら動きを止められた。素晴らしい選手であり、まだ伸びしろのある選手と感じた。
同じく、Aブロック中村昌永が正道会館チャンピオン沢田秀男と対戦。初日の沢田は強い突きと上下に振り分ける蹴りで圧倒的な強さで二日目を迎える。兵庫の強化組手『尼金』で、重量級チャンピオンの徳田忠邦や軽重量級チャンピオン住谷統らの胸を借りてきた中村だが、沢田の攻撃に反撃の勢いがなく本戦判定負け。全日本初出場がベスト16で終わる。しかし、中村はマメドフ、高橋を破った功績を認められ“敢闘賞”を受賞する。中村誠師範の息子というプレッシャーの中で小柄ながら、結果を出すのはさすがだ。
この時点で、関西勢は全て姿を消し、世界大会代表の夢は来年のウエイト制に持ち越された。第2回世界チャンピオン中村誠師範から始まり、前回第9回世界大会まで世界大会代表を輩出してきた中村道場にとって、最大の危機である。世界チャンピオン道場として、この歴史をとめることは許されない。選手の皆さんは心して稽古に励んでもらいたい。
結果は、ご存知の通りロシアの19歳タリエル・ニコラシビリが森善十朗を下し、史上最年少外国人チャンピオンが生まれた極真の歴史を塗り変えた大会であった。タリエルは、19歳でありながら、試合場での態度、挨拶、ハートとどれをとっても128名の選手の中でナンバーワンであったと思う。全日本王者が初めて海外に流出をしたものの、極真カラテ家らしい選手であったのは会場に居た皆が認めたのではないか。試合を、空手を楽しんでいるように私には見えた。彼のフェアープレイが『審判と観客を味方につけた』瞬間だ。
最後に今回の大会を終えて
今大会で目立ったのは、今年のウエイト制大会で感じたことと同じく、若手選手の活躍である。優勝したタリエル初め、小林大起、鎌田、荒田、安島、高橋、竹岡ら20歳前後の若者、少年部出身者が急成長したことである。彼等と世代の近い中高生、少年部が応援に駆けつけ、外国人や実績のある選手とやりあうそんな先輩の姿を見て、良い循環が生まれつつある。今後の極真カラテ界にとっては明るい兆しだ。
少年部で身につけた技術や柔軟性、打たれ強さ、試合経験、運動量を維持し、体が大人並みになった彼らは私たちの想像を超えるスピードで成長する。
あくまで、私見であるが昨今のフィギアスケート界やゴルフ界、体操、水泳、サッカー、野球界等と同じく、極真カラテ界もジュニア世代から活躍してきた選手が、今後の全日本大会を背負っていくのは間違いないと思う。
その意味で、私たちは少年部から長期的な視野で選手を育成していくシステム作りが必須であることを重要視しなければならないと思う。事実、急成長している関東の若手選手は、すでにそのルートに乗っているのである。関西地区も遅れをとってはいけない。極真カラテの素晴らしさを今一度世界に知らしめるのは、彼等少年部がターニングポイントであるのだから・・・
押忍