■ 交拳知愛
2008年7月26日 AGAINST THE ODDS
BBC(イギリス国営放送)オリンピック特集
- AGAINST THE ODDS - より。
カンボジアのプノンペンに位置する古びた陸上競技場。同国を代表するオリンピック代表者はたった4名。競技場内の小さな宿舎に住む彼らの一人にヘム・バンティング(25歳・マラソン)がいる。政府からの資金援助は月50ドル(6000円)。マラソンランナーとして絶対必要なランニングシューズの価格はその倍。人口過密状態のプノンペンの街中は人で溢れ帰り、道路は慢性の渋滞。汚染された空気を肺に送り込みながら、人の間を縫うようにトレーニングを行う。そんな悪条件の中、昨年タイで開催された東南アジア陸上競技大会ではマラソン2位の成績を収める。関係者の間ではその偉業に対し「ほとんど奇跡だ」と言われた。「母国のためにオリンピックに出場できることを誇りに思う」−インタビューに答える彼の笑顔がまぶしい。(ヘム・バンティングは8月24日に出場予定)
紛争の歴史を辿るレバノンのベイルートに住むズィド・リカ(40歳・クレー射撃)。多くのレバノン人がそうであるように、彼も1975年から15年間続いた内戦を生き抜いた。トレーニング中、次々と発射される標的を正確に打ち落としながら彼はインタビューに答える。「レバノン人は生まれながらにしてハンターだ。ベイルートではどの家庭にも銃が最低一梃は置いてあるんだから。でも私達オリンピアンはそれを平和的に使うことができるんだ」 ズィド・リカにとってオリンピックへの道は競技用具の獲得から始めなければならない。2006年、イスラエルとの戦争終焉を目的とした国連決議案が選択された。そのためアメリカやヨーロッパから最新の銃を購入することができないのだ。また頻繁に起こる民衆の反乱はトレーニングの中止を余儀なくされる。「与えられた条件は厳しいが、周りのみんながサポートしてくれる。オリンピックに出場できることは本当に幸運なことなんだよ」(ズィド・リカは8月15日に出場予定)
1991年に起こった内戦が今でも続き、事実上無政府状態の東アフリカに位置するソマリア。首都であるガンディッシュの貧民街に住むサミヤ・オマーは200m走に出場予定の16歳の女の子だ。貧困に苦しむ家族にとって彼女の存在は心の支えになっている。しかしその道のりは平坦ではない。イスラム社会であるこの国では、女性が肌をあらわにしてスポーツに勤しむことに抵抗を示す。街中をジョギング中のサミヤに対し、付近に陣取る民兵から心無い嘲笑や中傷が飛び交う。親族や友人からも地元でトレーニングをするのを控えて欲しいと言われる。日によっては、民兵に止められ競技場に入れないときもある。幼い16歳に様々なプレッシャーがのしかかる。それでも競技を辞めないのはオリンピック出場が決定したからだ。内戦の最中でもスポーツには寛容なこの国では、オリンピックで成功を収めれば希望が広がる。5月に行われたアフリカ選手権で最下位だったサミヤにとってそれは遠い夢かもしれない。しかし出場することから全ては始まるはずだ。(サミヤ・オマーは8月16日に出場予定)
同シリーズには上記に挙げた3名以外にもたくさんのアスリートが紹介されています。理想的なトレーニング環境を確保できる先進諸国
は自国のメダルラッシュ
を目指しています。その舞台裏では途上国の代表者達が日常生活の苦難に直面しながら北京への道のりを目指しています。
オリンピックのモットーは「より速く、より高く、より強く」ですが、その「強く」には筋力のみではなく人間が本来持つ精神力の強さを標榜しているはずです。AGAINST
THE ODDS 〜 逆境を乗りこえて... 無名のアスリートたちが輝く瞬間がもうすぐやってきます。■
注)中村道場という一団体に掲載されるコラムであるため私的な題材や意見は極力避け、一般的な内容に的を広げてあります。しかし文章作成上、全ての主観を取り除くことは不可能であることもご理解下さい。上記の文章内で不快な気分を持たれた方は、このコラム蘭はあくまでHP係りが提供しているものであり中村道場全体の意見を代表しているものではない、ということをご理解ください。
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