■ 交拳知愛
2008年6月06日 報道とスポーツ
海外情勢を把握するメディア最大手の一つにCNNというアメリカのニュース専門放送局があります。91年の湾岸戦争のライブ放送以来、視聴者層を着実に広げ、世界中に支局を持つメディア・ジャイアントに急成長しました。
ただ最近では、アメリカ国民の間で自国のCNNではなくイギリスBBCにチャンネルを合わせる傾向が表れています。その理由として中立性の度合いが挙げられます。CNNの親会社は総合メディア大手タイム・ワーナーであり、その運営は完全営利目的です。
一方、BBCは国営放送でイギリス国民から徴収する視聴料で運営されています。日本のNHKと同等のシステムですが、BBCは放送内容について自国政府からの干渉を一切受けない経営構造になっているため、放送されるニュースの公共性、中立性が一定レベル保持されるわけです。英国軍がイラク戦争参加を決定した際にBBCが政府に反論する主張を放送した事実がその証左として挙げられます。
正確性、公共性、中立性を重んじるジャーナリズムは客観報道の原則が存在します。しかし政府、世論、視聴率、スポンサーが絡む諸状況はしばしばその原則を脅かします。BBCはこういったネガティブな要素から距離をおくことにより水準の高い客観性を保っているわけです。実はこれと酷似する現象がスポーツの世界にもあります。それは審判の存在です。
スポーツ競技で審判を務めるということは報道精神と比肩する程の覚悟が必要です。大会日まで長期に渡って準備してきた選手を公平に裁くためには正確性、中立性、客観性を併せ持った審判団の起用が不可欠です。プロスポーツでは審判委員会が設置され、資格取得には面接、筆記、実技試験などの難関を通過しなければなりません。審判もプロとして認知しているため、月給や年棒制、誤審に対する罰則、定年制などが導入されています。また中立性を保持するため各チームとは独立した組織となっています。
極真空手の世界ではどうでしょうか?大山総裁が存命の頃、しばしばルール自体が無視される試合もありました。規定では延長2回までのはずが3回、4回と延ばされることは珍しいことではありませんでした。審判員も「高段者=審判」といった具合で審判資格基準は明確では無かったのです。良くも悪くも武道とスポーツの違いが審判団にまで表れていた時代でした。
ところが第5回世界大会(1991年)前後よりルールの明確化と遵守が原則とされ始めました。更に松井館長体制となると審判ライセンスの発行が開始され、対外的にも審判水準の高さをアピールすることに繋がっていきます。「ワールド空手」では全日本以上の大会レポートに審判団の氏名が掲載され、重要な試合では判定材料に関するコメントが付記されるようになっています。つまり審判団の洗練化が進んでいるのです。こういった傾向は公平な判定を何よりも望む選手達にとって歓迎すべきことです。
ここから先、更に改良を加えるなら、やはり審判委員会の独立設置が望ましいことは言うまでもありません。現状ではライセンスを所持している審判員は道場運営者や支部長がほとんどではないでしょうか?スポーツの世界でいうならばコーチが審判を兼任しているわけです。5人で構成される審判団のうち例え一人でも戦っている選手に近い立場にいる副審がいれば公平性を欠くことになります。独立委員会設置には数々の困難を伴うでしょうが、将来を背負う選手のために、そして空手の社会認知への一環として読者に一考願うべく提言させていただきました。
報道とスポーツ。社会的評価を高める共通項が存在するようです。■
注)中村道場という一団体に掲載されるコラムであるため私的な題材や意見は極力避け、一般的な内容に的を広げてあります。しかし文章作成上、全ての主観を取り除くことは不可能であることもご理解下さい。上記の文章内で不快な気分を持たれた方は、このコラム蘭はあくまでHP係りが提供しているものであり中村道場全体の意見を代表しているものではない、ということをご理解ください。
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